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この学名はドイツ・ベルリン自然史博物館が、300人の来館者を対象に行った投票で選ばれたもの。同館のミヒャエル・オール（Michael Ohl）さんらが4月末、米科学誌プロスワン（PLOS One）に発表しました。

「A.ディメンター」と命名されたこのセナガアナバチ科のハチは、獲物であるゴキブリの頭部に針を刺し神経毒を注入し、部分的に麻痺させて、自分たちの産卵場所に誘導します。毒によって神経を破壊されたゴキブリは、ゾンビのようにハチの言いなりになり、その後を大人しくついて行くとのこと。

ハチはゴキブリの体内に卵を産み付け、数日後に卵から孵化したハチの幼虫は、ゴキブリを食べて外に出ます（汗）。

このような寄生バチは200種ほど存在することが知られており、「A.ディメンター」もその一種です。

学名を決める投票では、次の４つの名前が候補に。赤と黒の2色のハチであることから「Ampulex bicolor」（bicolorは2色の意）、タイで発見されたことから同国で最も古いモン族にちなんで「Ampulex mon」、アリを真似た外見・行動を見せるため“盗用者”という意味の「Ampulex Plagiator」、そして「Ampulex ディメンター」でした。

投票の際の「Ampulex ディメンター」の説明には、「この種名は『ハリー・ポッター』の本に登場する架空のキャラクター、ディメンターに由来します。ディメンターは人間の魂を吸い取る魔法生物で、犠牲者の体は傷つけませんが、心を空っぽにします。この名前は、麻痺させられたゴキブリの従順さを暗に示しています」と書いてありました。

この投票は、一般の人に生物の多様性や新種の発見に興味を持ってもらうために開催された特別イベントの中で行われ、 オールさんは「分類学的名称に関する投票は、非常に好意的に受け入れられた。参加者は我々の説明に興味を持ってくれたようだ」と満足している様子。

新種の生物に有名人（キャラクター）の名前が付けられたのはこれが初めてではなく、ミュージシャンの故ボブ・マーリーさんの名を冠したカリブ海の寄生エビや、オバマ大統領の笑顔から見える歯にちなんで「オバマドン」と命名されたトカゲ、ビル・ゲイツと名がついた花バエや、アンジェリーナ・ジョリーの名をとった「Aptostichus angelinajoliae」というクモなどがあります。