ファンタスティック・ビーストと魔法使いの旅

登場する「魔法動物」 解説編

Fantastic Beasts and Where to Find Them

映画情報はこちら

【魔法動物】
デミガイズNEW! | オカミーNEW! | ビリーウィグNEW! | マートラップNEW!
ニフラースウーピング・イーブルUPDATE! | ボウトラックル | エルンペント
オーグリーサスカッチ(ビッグフット)サンダーバードUPDATE!
スキン・ウォーカーワンパスキャットホワイト・リバー・モンスタールーガルー

【ヒトたる存在】
屋敷しもべ妖精NEW! | ゴブリン(小鬼)NEW!

【番外編】
「アメリカ合衆国とインディアンの歴史」

『ファンタスティック・ビーストと魔法使いの旅』全商品



   

デミガイズ Demiguise
■デミガイズ

サル(霊長類)に似た草食動物。大きくて悲しげな黒い目を持ち、銀色の毛に覆われ、オランウータンに似ている。思いのままに姿を消すという驚くべき能力を持ち、予知能力も備えている。従って、デミガイズを捕まえる唯一の方法は、全く予測不可能なことをすることである。基本的には大人しい生き物だが、脅されるとかなりきつく噛みつくことがある。デミガイズの毛は、透明マントの素材になるので珍重され高値で取引されている。


©Pottermore

 

オカミー Occamy
■オカミー

飾り羽を持つ、二本足の有翼の生物。ヘビのような胴体を持ち、ドラゴンと鳥を掛け合わせたように見える。卵から孵化し、その殻は純銀で出来ていて非常に価値がある。極東とインドが原産で、その生息地のサイズが大きく関係し、利用可能な空間に適応して伸縮自在の魔法動物。


©Pottermore

エルンペント Erumpent
■エルンペント

アフリカ原産。友好的で茶目っ気のある気質だが、ニュートの動物の中では最も大きく、最も威圧感のある存在。角があり、鎧のような皮膚、ロープのように長い尾を持つ。

その角が真っ赤に燃え、かなり大きいことに気づくまでは、遠くから見るとサイと間違えてしまう可能性がある。

分厚い皮膚はほとんどの魔法と呪文を撥ね付けることができ、尖った角は貫いたものが何であれ、破裂させることができる毒液を内蔵している。

ニュートはメスのエルンペントを所有しているが、不幸にも彼女は発情期を迎え、オスのエルンペントを探している。


©Pottermore

ビリーウィグ Billywig
■ビリーウィグ

小さくて鮮やかなサファイアブルーの虫。頭のてっぺんに羽があり、回転しながら飛行する。刺されるとめまいを起こし、浮遊します。さまざまな魔法薬に使われ、人気菓子フィフィ フィズビーの材料になると考えられている。


マートラップ Murtlap
■マートラップ

ネズミに似た生き物。背中にイソギンチャクの触手のようなものを生やしている。この生えているものをピクルスにして食べると、呪いに対する抵抗力が増強しますが、食べ過ぎると耳からみっともない紫色の毛が生えてくる。甲殻類をエサにし、自分を踏みつける愚か者の足を無差別に食べる(汗)。


©Warner Bros. Entertainment Inc. Cinema Blend

ニフラー Niffler
■ニフラー

ニュートお気に入りのいたずら好きの魔法動物♪フワフワした毛におおわれた小さな動物で、長くて丸みのある突き出た鼻が特徴。そのせいでモグラとカモノハシの中間に見える。キラキラ光るものなら何でも大好きで、欲求を抑えることができない。驚くほど敏捷な身のこなしで目をした光物を盗み取る。戦利品は、見た目より大量に入るお腹の袋にしまいこむ。優しく愛情深い生物だが、光物を追いかけているときはかなり破壊的。。だからハウスペットには向かない。

予告編でもお財布をガッチリつかんで離しません(笑)



スウーピング・イーブル/Swooping Evil
■スウーピング・イーブルSwooping Evil

予告編(こちらこちら)に登場した、魔法動物。
非常に大きな蝶と爬虫類の掛けあわせのように見える。休息中は緑色のトゲで覆われた繭の中に住んでいる。だがカラフルで逆立つ翼を広げると、奇妙な美しさを放つ。脳を吸い取る力を持つため、極めて危険だが、反対に、その毒液をきちんと薄めれば、悪い記憶を消すことができる非常に有益な動物となる。



ボウトラックル Bowtruckle
■ボウトラックル

木を守る生き物。最大でも20pほどの小さな背丈の小枝のような存在。根を持つ樹木で、小さな葉っぱがついている2本の小枝と、2つの茶色い目、口からできている。ニュートは少なくともこの生物を6体持っており、名前は、ピケット、タイタス、フィン、ロッピー、マーロウ、トムだが、ピケットが特にお気に入り。いつも胸ポケットにしまって保護している。

ふだんは内気でおとなしい動物ですが、自分の棲む木に危険が迫ると襲いかかり、長く細い指で敵の目玉をほじくると言われている。昆虫を食べ、魔法使いが杖用の木を切る際はワラジムシを供えると、その間はなだめておくことができる。優しくてとても内気な性格で、非常に誠実な魔法動物。鍵を開ける特技を持つ。


©2015Warner Bros. Entertainment Inc.


©2015Warner Bros. Entertainment Inc.

オーグリー Augrey
■オーグリー

アイルランド・フェニックスとしても知られる動物。ほっそりして悲しげな目つきの鳥で、腹ペコの小型のハゲワシのような外見に、緑がかった黒い目を持つ。

非常に内気で、土砂降りの雨のときだけ飛び、それ以外のときは、涙の形をした巣にこもっている。
低くグッグッと胸を張り裂けるような震える鳴き声が特徴。

かつてその声は死の予兆と信じられ、藪の茂みで姿の見えないオーグリーの哀悼の鳴き声を聞き、心臓発作に襲われた魔法使いも少なくなかった。その後、実は単に雨が近づくので泣いているだけだと分かり、家庭用の天気予報鳥として流行したが、冬になると絶え間なく哀悼の鳴き声を上げるため、耐えられないという声もある。(『幻の動物とその生息地』P34〜35より)

*オーグリーは、舞台『ハリー・ポッターと呪いの子』に登場します。人間の姿になることもあるらしいです・・

『オーグリーが鳴いた夜、私はなぜ死ななかったのか』の著者ガリバー・ポークビーの蛙チョコのカード


サスカッチ Sasquatch / ビッグフットBig Foot
■サスカッチ(ビッグフット)

ビッグフットは北アメリカ大陸で目撃される、雪男のような身長2〜3メートルの大男。 褐色もしくはグレーの体毛に覆われており、ネイティブ・アメリカン社会やカナダでは、サスカッチと呼ばれています。人間を攻撃することはありませんが、不快な体臭がするといいます。

魔法界では、1892年に起きた「サスカッチの大反乱」が起きており(これについては、オルティーズ・オフラハティによる名著『ビッグフットの最後の抵抗』に詳しく説明)」、そのせいで、MACUSA本部がワシントンからニューヨークに移りました。

オレゴンに出現したサスカッチ

Sources:Oregonlive

サンダーバード Thunderbird
■サンダーバードUPDATE!

大きくて堂々とした風格の米国の魔法鳥。乾燥した気候のアリゾナが原産。頭はワシ(ヒッポグリフ)のものと似ている。重なりあうパワフルな翼は雲間に見える太陽のような模様を描いてキラキラと輝き、その羽ばたきは嵐を創り出すことができる。また危険を察知することもできる。

ニュートはエジプトの密売業者からこれを救出し、フランクと名付けてアリゾナの自然生息地に返す約束をする。悲しいことにフランクの脚の1本は鎖をつけられていた時の傷が癒えていないが、自分を救い出してくれたニュートへの感謝の念は明らかである。

サンダーバードはネイティブ・アメリカンの伝説の鳥で、多くの部族の神話に登場。中でもチノーク・インディアンの神話では、人間はサンダーバードの卵から生まれたとされている。


スキン・ウォーカー Skin Walker
■スキン・ウォーカー

ナバホインディアンの伝説に登場する、“動物に変身する能力を持った人間”のこと。伝承によるとスキン・ウォーカーは、まじない師または部族の最高レベルの司祭で、その能力を悪事に使って動物に変身し、人を苦しめます。 スキンウォーカーになるには、近親者を殺すという最も邪悪な行為を行う必要があり、そうすることで彼らは動物や他の人間に変身する超自然の力を得るといいます。

ハリー・ポッターの魔法界では、ネイティブ・アメリカンの間に「スキン・ウォーカー」と呼ばれる“邪悪な動物もどきの伝承があり、彼らは家族をいけにえに捧げることでその変身能力を得たと伝えられていました。
しかしこのような悪評は、魔力のないマグルまじない師が流したもので、実際は、迫害から逃れたり、部族のために狩りをする目的で変身していたといいます。


Sources:Navajo Legend

*J・K・ローリングが書いたスキン・ウォーカーの伝説は、一部のネイティブ・アメリカンから「自分たちの文化を利用している」と批判が噴出。
チェロキー族の学者エイドリアン・キーンさんは「社会の隅に追いやられた人々の生きた伝統を自分のものにし、奪うことはできない。これは植民地主義であり(文化の)盗用だ」と非難し、「先住民の精神や宗教は、魔法使いと同レベルではない」と訴えています。
また 「私たちはは現代の人間であり、(映画や文学で創作された)神話やまじない師、野蛮な戦士といったステレオタイプのイメージをはねのけようと日夜戦っているのです」と誤ったイメージを押し付けられていると抗議し、他の先住民も「インディアンでない人たちが、私たちに対し古い人種差別のステレオタイプを使うことに問題がある」と不満を表明しています。

一方で、ハリー・ポッターには、もともと聖書やアーサー王伝説などからの引用や、さまざまな伝説の生物などが多数描かれており(日本のカッパも登場)、「これらの<文化の利用>があるからこそハリポタが面白く、人気なのであって、文化を登場させることは侮辱ではなく、むしろその反対だろう」と擁護する声も多々出ています。

これまでアメリカ社会はインディアンに対し、土地を奪い絶滅政策で虐殺し続けただけでなく、彼らの伝統的な文化や精神までも「悪しきもの」と否定。「野蛮人」のイメージを与える作品を創作して貶め(有名な『リトル・トリー』もKKKが書いた本)、社会の隅に追いやってきた長い歴史があり、先住民の今回の反応は、アメリカによるインディアン文化への蹂躙への反発、白人に対する不信感が背景にあるように見えます。(アメリカ合衆国とインディアンの歴史をこちらに掲載(引用)したのでぜひご一読下さい)

ワンプスキャット Wampus cat
■ワンプスキャット

東テネシーの先住民に伝わる、黄色い目をした半身半獣の怪物。元々は美しいインディアンの女性でしたが、夫の素行を疑い、山猫の毛皮で姿を隠して、仲間と狩りに行く夫の後を尾行。女性は禁じられていた魔法を目にしてしまい、まじない師によって山猫の姿に変えられてしまいました。

ハリー・ポッターでは、豹に似た生き物。杖職人のジョハネス・ジョンカーが、好んでこの生物の毛を杖の芯に用いたといいます。



Sources:Photobucket
ホワイト・リバー・モンスター White River Monster
■ホワイト・リバー・モンスター

ミシシッピー川の支流、ホワイト・リバーで目撃されるUMA(未確認生物)。初めて目撃されたのは1915年で、地元の漁師が発見し、その後1937年に灰色をした怪物(車3台分の大きさ)を目撃。地元の議員は、巨大なチョウザメまたはナマズだと証言しています。

ハリポタでは、杖作りのティアゴ・キンタナが、ホワイト・リバー・モンスターの背から取り出した半透明の脊椎骨を杖の芯に使っていました。

ホワイト・リバー・モンスター

Sources:Animalplanet
ルーガルー rougarou
■ルーガルー
狼男の一種。ルイジアナ州のケイジャンの民話に登場する狼男のこと(ほかにもRoux-Ga-Roux, Rugaroo, Rugaru, or Loup Garouなどのスペルあり)。

ハリー・ポッターでは、ルーガルーはルイジアナ州の沼に棲む、犬の頭を持った凶暴な怪物。ニューオーリンズの著名な杖作りヴィオレッタ・ボーヴェが、これの毛を杖の芯に使っていました。


©Pottermore

屋敷しもべ妖精 House-elf
■屋敷しもべ妖精

ドビーやクリーチャーでおなじみの「屋敷しもべ妖精」が、『ファンタスティック・ビースト』にも登場。
米国の魔法省MACUSAにも、おおぜいの屋敷しもべ妖精が働いており、このように杖を磨いたり魔法使いのお世話をしています。クリーチャーに瓜二つのこのしもべ妖精、親戚なのでしょうか(笑)??


©Warner Bros. Entertainment Inc.

ゴブリン Gpblin
■ゴブリン

背が低く、浅黒く賢そうな顔つきの生き物。ハリー・ポッターの世界ではグリンゴッツ銀行を経営していましたが、本作ではもぐりの酒場(禁酒法時代に酒を提供していた酒場)を経営しているようです(笑)。
本作で初めて女性のゴブリンが登場しました。

女性のゴブリン(右)

©Warner Bros. Entertainment Inc.



男のゴブリン。ロン・パールマンさん??

©Warner Bros. Entertainment Inc.

動画

【『ファンタスティック・ビーストと魔法使いの旅』コミコン予告編】NEW!

【『北アメリカの魔法界の歴史』特別映像字幕付き】 

【『ファンタスティック・ビーストと魔法使いの旅』特別映像】

アメリカ合衆国とインディアンの歴史 
引用元:世界大百科事典第2版「アメリカン・インディアン」P24〜P30
【アメリカ合衆国とインディアン】
 

19世紀のアメリカ史家フランシス・パークマンは,白人とインディアンの接触の仕方の特性について次のように要約した。〈スペイン文明はインディアンを圧殺した。イギリス文明はインディアンをさげすみ無視した。フランス文明はインディアンを抱擁しいつくしんだ〉と。イギリス文明とその後継者アメリカ合衆国とインディアンとの関係の歴史は,大別して次のように時代を区分することができる。第1は軍事的征服と武力抵抗の時代(1600‐1880年代)。(1)植民地時代,(2)独立革命から南北戦争後まで。第2は文化的解体と再生の時代(1880‐1990年代)。(1)部族文化の解体,(2)部族文化の復活と民族自決。全時代を通じて,インディアンの〈清掃〉つまり土地奪取とその地への〈植民〉の政策が,形態はさまざまだが一貫して追求された。


[軍事的征服と武力抵抗の時代]
(1)植民地時代(1600‐1760年代) インディアンと白人との接触は友好に始まり敵対に終わったとしばしばいわれるが,それは事実ではない。イギリス最初の植民地バージニアではキャプテン・ジョン・スミスらははじめから武器をもってポーハタン族を威嚇し,トウモロコシの供出を強制し戦争をしかけた。ポカホンタスとジョン・ロルフの〈結婚の平和〉も,友好というよりは恐怖の均衡であり,1622年のポーハタン族の大蜂起に結果し,以後20年抵抗がやむまで征服戦争がつづいた。ニューイングランドのプリマス植民地の場合も,一方でワムパノアグ族族長マサソイットとは友好関係が結ばれたが,他方で近隣の多くの諸部族とは敵対し,入植2年後の1622年にはプリマス軍はマサチューセッツ族の族長4人を謀殺し,その首を棒に突きさし20年間もプリマス砦の上にさらした。

30年に植民が開始されたマサチューセッツ植民地でも,7年後の37年にピークオート戦争がおこり,500人のピークオート族が虐殺された。ひきつづく白人入植者の土地侵略と伝統文化への侮辱に耐えかねたワムパノアグ族族長メタカムは,1675‐76年に反撃にたち上がり,ニューイングランドの諸部族がこれに連合して,ニューイングランド植民地連合軍と一大決戦を交えた。これをフィリップ王の戦争と呼ぶ。諸部族連合軍は植民地に大打撃を与えたが敗北した。他方,セント・ローレンス川地方に植民地を建設したフランスは,毛皮交易の相手アルゴンキン系諸部族と友好関係を結んだ。またオランダが建設したオルバニー植民地も毛皮交易を通じてモホーク族との友好関係を保ったが,ニューアムステルダム植民地ではキーフト戦争などでインディアンを冷酷に虐殺し土地を奪取した。このようにインディアンと白人との関係は,パークマンの言うように〈文明〉の違いというよりは,主として土地奪取を前提とする農業植民地の建設・拡大か,毛皮交易かという植民の経済的動機によって規定された。

一方,ニューヨーク北部のイロコイ連合は,18世紀前半,英仏両勢力の対立を利用しつつ中立を保ち領土の保全をはかった。南部のサウス・カロライナ植民地では18世紀初頭以来インディアン奴隷狩りと奴隷貿易がさかんに行われ,そのため部族間の対立と戦争が助長され捕虜の奴隷化が促進された。東部森林文化領域南西部の有力部族であるクリーク族やチェロキー族はイロコイ諸族のように植民勢力間の敵対関係を巧みに利用して中立の立場を守ったが,フレンチ・インディアン戦争においてはチェロキー族はイギリスと敵対した。

(2)独立革命から南北戦争後まで(1760‐1880年代) 独立戦争では,大半の部族がイギリスと同盟して愛国派軍に対抗した。そのうち,五大湖周辺の北西部諸部族は,1763年のポンティアク戦争から94年のフォールン・ティンバーズの戦での敗北まで,本国からの独立革命を遂行しつつあった植民地人に対して,自らの自由と解放のために戦ったのである。この戦いは,1812年戦争(第2次英米戦争)の際にショーニー族族長テクムシによってひきつがれ,彼は全インディアンの大同団結を提唱したが,大望を果たせず,W. H. ハリソン将軍に敗れて戦死した。

同じころ南部ではチェロキー族などが文明化政策を受け入れて農業化・文明化への道を歩み,黒人奴隷制度も導入したが,クリーク族の抗戦派は文明化を拒み,A. ジャクソン軍と戦って敗れ,広大な領土を奪われた。こうしてミシシッピ川以東における優位を確立した合衆国政府は,1830年にインディアン強制移住法を制定して,ミシシッピ川以東の諸部族に同川以西への移住を強制した。諸部族は多大の犠牲者を出しながら長い〈涙の旅路〉をたどった。セミノール族は強制移住に抵抗して黒人と結束して戦ったが敗れた。

40年代の急激な領土膨張とゴールドラッシュによって,南西部や大平原,グレート・ベースンや太平洋沿岸の諸部族は,押し寄せる移住者の群れと合衆国軍に初めて向き合うことになり,コマンチ,アパッチ,ナバホ,シャイアン,スー,アラパホなどの諸部族は果敢な抵抗を開始した。南北戦争が起こると,チェロキー族やクリーク族などのインディアン地方(現在のオクラホマ州東部)の諸部族は南北両軍の戦略にまきこまれ,部族間のみならず部族内が敵味方に分かれて戦う悲劇を強いられた。他方,戦争中でもスー族の討伐や,〈サンド・クリークの虐殺〉など大平原諸部族への圧力は一層強まった。南北戦争後70年代をピークとして合衆国軍と諸部族との最後の決戦が合衆国の西半分の各地で展開された。インディアン側は,1866年の W. J. フェッターマン大尉以下81名のせん滅や,76年のカスター連隊のせん滅などの戦果をあげたが,軍事力の格段の違いや,生活資源であるバイソンの絶滅などにより抵抗を継続することができず,保留地に封じこめられた。


[文化的解体と再生の時代]
  (1)部族文化の解体(1880‐1930年代) 南北戦争後の急激な資本主義の発展のなかで,牧畜業者,鉱山業者,森林業者,鉄道業者,土地投機業者そして農民は,インディアン保留地の土地と資源に目をつけ,保留地そのものを解体し奪おうとしていた。一方,人道主義的改革家は,インディアンの部族組織と部族文化を解体し,彼らを農民・市民として文明化し,白人市民社会に同化させることを目指した。この経済的欲求と文明化のイデオロギーが合致して,1887年に一般土地割当法(ドーズ法)が制定された。それは,保留地の一部をインディアン個人に単純所有地として割り当て,余剰地を白人耕作者に開放することを規定したもので,軍事力による土地奪取から,法による土地奪取への転機を画した。その後の修正立法措置で割当地そのものにも賃貸制が導入されて,保留地の土地は急速にインディアンの手から白人の手に移った。その結果1887年に1億3800万エーカー(1エーカーは約0.4ha)あった保留地は,1900年には7780万エーカーに,34年には4900万エーカーに減少した。1924年にいたって市民権が認められたものの,白人市民と完全に平等になったわけではなかった。土地と文化を奪われつつあった西部の諸部族は,救済を宗教に求め,ゴースト・ダンスやサン・ダンスやペヨーテ信仰が流行した。

(2)部族文化の復活と民族自決(1930‐90年代) 1934年にニューディール政策の一環として制定されたインディアン再組織法(ホイーラー=ハワード法)により,個人割当制が廃止され部族自治と部族共有制が復活されて,ようやく土地の喪失に歯止めがかけられた。さらに各部族に回転資金や教育資金が交付され,経済的向上や教育の改善や伝統文化の復活がはかられた。しかしこれらのプログラムは,保守勢力の妨害により十分な効果があがらぬうちに,ニューディール政策全般の退潮と第2次世界大戦の勃発によって,ますます後退をよぎなくされた。さらに戦後の保守的風潮のなかで,53年にはインディアンの固有の権利を奪い保留地の解体をねらう連邦管理終結政策が打ち出され,メノミニー族などに適用された。これに反対するため61年,全国アメリカ・インディアン会議が開かれ,これを出発点として60年代以降インディアン自身による固有の諸権利の回復と民族自決の運動が展開された。69‐71年のアルカトラズ島占領や,73年のウーンデッド・ニー占拠事件は世界の耳目を聳動(しようどう)した。

これらの運動を推進したのが,1968年に結成された〈アメリカ・インディアン運動(AIM)〉で,74年に AIM は第1回国際インディアン条約会議を主催し先住民族の国際的連帯を目指した。同会議は77年に国際連合によって非政府組織(NGO)として承認され,80年代以降には国連の先住民作業部会で活動を展開した。先住民作業部会は1973年の〈国際先住民年〉とその後の〈国際先住民の10年〉の成立に中心的な役割を果たした。一方,土地の権利,水利権,漁業権をめぐる運動は1970年代以降も各地で展開され一定の成果をあげている。土地の回復の運動は,舞台をインディアン請求委員会から連邦裁判所に移し,メイン州のパサマコディ族とペノブスコット族の勝訴をはじめ,各地で勝訴をかちとり,ブラックヒルズ返還訴訟など現在係争中のものもいくつかある。またウィスコンシン州北部でのアニシナベ族の漁業権闘争や,ミズーリ川上流,コロンビア川,ヒーラ川などの河川や湖沼での水利権闘争も各地で展開されている。

また教育の面でも,従来の強制的な同化政策が批判され,1968年のバイリンガル教育法や78年のコミュニティ・カレッジ援助法などインディアン向けの教育法のほか,一般の恵まれない子弟のためのヘッドスタート計画などが加わって,教育の機会がひろげられ,部族語教育が拡充され,大学進学者も増加した。宗教の面では,78年にインディアン宗教自由法が,90年には先住アメリカ人墓地保護・返還法が制定され,固有の宗教上の権利が保障された。一方,ナバホやパインリッジなどのいくつかの保留地では,地下のウラン鉱の採掘会社の無責任な管理から,深刻な放射能被曝問題が生じている。

また90年の夏には,カナダのモントリオール市郊外で衝撃的な事件〈オカ紛争〉が起こった。ゴルフ場建設に反対して道路や橋を封鎖した数百人のモホーク族〈戦士〉を排除するため,戦車,大砲,ジェット戦闘機を備えた4000人のカナダ軍とケベック州兵軍が出動した。武力征服の歴史は終わっていなかったのである。(引用終わり)

富田 虎男(立教大学名誉教授 アメリカ史)

©平凡社 世界大百科事典 第2版  赤字はポッターマニアが入れたもの




 

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