舞台は1969年6月。新しい歴史の1ページが世界史に刻まれる直前のことだった。CIA諜報員のキッドマン(ロン・パールマン)はベトナム戦争帰り。戦地での体験がトラウマとなり、母国アメリカに帰国してからも PTSD(心的外傷後ストレス障害)を患っていた。そんなキッドマンに、本部から新たな極秘任務の指令がくだる。これまで多大なる時間を宇宙開発に費やしてきた NASA だったが失敗続き。今度のアポロ11号の月面着陸を成功させなければ、ソ連に先を越されてしまうと焦っていた。 そこで、万が一失敗した場合の保険として、『2001 年宇宙の旅』(68)を監督したスタンリー・キューブリックに偽映像の作成を依頼し、 その上秘密保持のために映像制作に関わった者は抹殺しにしろというのだ。キッドマンは早速大金を手に飛 行機に乗りこみ、キューブリックが住むロンドンへと向かった。
その頃ロンドンでは、売れないバンドのマネージャーで借金まみれのジョニー(ルパート・グリント)が、資金繰りと借金返済に四苦八苦していた。バンドからはクビ宣告をされ、自宅も借金取りに荒らされる始末。そこでジョニーはエージェントとして成功を収めている従兄弟のデレク(スティーヴン・キャンベル・ムーア)に助けを 求めに行く。しかし彼からは何の救いも得られず、諦めかけたそのとき、偶然にも大金を手にしたキッドマンと出会う。
ひょんなことからジョニーをエージェントの代表だと思い込んだキッドマンは、ジョニーにキューブリック 監督との打ち合わせを依頼。金に困っているジョニーは、ルームメイトでジャンキーのレオン(ロバート・シーハ ン)を偽キューブリックに仕立ててキッドマンを騙し、まんまと大金を手に入れることに成功する。そして、騙し取った金で早速派手な夜を過ごすのだった。 しかし、ジョニーの散財の様子はすぐさま借金取りたちに伝わり、 ジョニーがキッドマンから騙しとった金を、今度は借金取りのギャングたちが持ち去ってしまう。しかも、ジョニ ーは金を失って初めて、その大金の出所がアメリ力のCIA だと知り恐怖に震える。「これは本当にやばいこと になったぞ!」
一方、ホテルに戻ったキッドマンは、たまたまテレビで本当のスタンリー・キューブリックの姿を目にし、ジョニーたちに踊されたことを知る。怒りに燃えたキッドマンはジョニーとレオンを探し出し、金の返済を求めるも、 ギャングの手に渡ったことを知り茫然自失。月面着陸まであと1週間。それまでに映像をアメリ力に送らないと手遅れどころか、自分たちの命も危ない。しかし時間がない! そこで3人は自分たちで映像をなんとかするという無謀なプランを立て、ジョニーの知り合いの映画監督レターナス(トム・オーデナールト)に映画製作の依頼に出かける。ところが彼のアトリエはドラッグが氾濫したヒッピーのたまり場。おまけにレナータスのクリエイティブなビジョンもメチャクチャで、とても高度な映像ができるような環境ではない。
しかし後がないキッドマ ンたちはレナータスをなんとか説得し、資金さえあればすぐに映像製作に着手するところまでこぎつける。といっても手もとに金はない−−。というわけで、キッドマンとジョニーはギャングの本部に乗り込み、派手な銃撃戦を繰り広げて金を奪還。ヒッピーたちもスタッフとして参加させ、とんでもないリスクを抱えながらもなんとか映像製作をスタートする。
その裏でアメリ力側はどうもキッドマンの様子がおかしいと感じていた。そこで工作員を現場に送り込み、映像が完成した後、製作に関わった者たちを消そうと密かに動き出していた。同じころ、多くの仲間の命と金を奪われたギャングたちもキッドマンたちへの報復を誓い、現場へと乗りこむ準備を整えていた。 はたしてキッドマンたちは無事映像を完成させられるのか? いや、彼らの命はどうなるのか? それよりも月面着陸は成功するのか?世紀の瞬間を前に、男たちの死闘が始まろうとしていた一一
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